開始数ページで主人公にどうしようもない嫌悪感を抱きました。
で、それが最後まで解消されること無く、差し引いても自分には合わない話でした。
終始「周りとは違う俺様かっこいい」テイストが感じられ、
ラストなんてまさしくそれそのままの結論でお終い。
以前読んだ「琥珀の心臓」と同じように、
スポットライトが当てられているのが一部の人物だけであり、
本来重要な要素になるはずの周囲の人物が記号ですらない背景に終わっている。
……そういう意味では、顔の見えないその他大勢という、
社会を構成する要素としての大衆を表しているとも言えますが。
動かすのは一部の人間、つまり主人公らが――劇中で否定的に描写しているはずの、
上の立場の人間となっていることに作者は気付いていないのでしょうか。
とりあえず、各クラスごとの"政治"のあり方の違いはなかなかに興味深いものではありました。
その点のリアリティと描写だけは良かったと思います。
結局それらも見た目はともかくワンマン独裁政治ばかりだったわけですが。
自由と無責任を履き違えているまさしく十代の若者のお話。
問題なのはその危うさを指摘するのではなく、
それによって排斥されることが孤高の美であるように描いている点。
閉鎖空間における若者の群像劇という共通項で「無限のリヴァイアス」を思い出しましたが、
それに比べると構成の甘さや人物描写でまるっきり劣っていると思います。
正直、どうしてこれが金賞受賞かわかりません。
十代に受ける作品、という意味ではアリかもしれませんが。
瀬尾 つかさ著